勝つための走りから、誰かとつながる走りへ:ACEチャリティ・アンバサダー松垣さんインタビュー

2026.02.03 ACE

箱根駅伝、実業団駅伝という競技の最前線を走り、引退後は全盲ランナーのガイドとして“支える走り”にも向き合ってきた松垣さんに、競技者としてだけでなく、伴走者、そしてチャリティ・アンバサダーとして走り続けてきた今、ランナー目線で見えているものとは何か、走ることを通じて社会とつながる、その価値について話を伺いました。


松垣 省吾さん
(ACEチャリティ・アンバサダー)


学生時代に箱根駅伝へ出場し、山下りの6区を3大会連続で担当。大学卒業後は実業団・NTT西日本に所属し、全国大会に出場した。競技引退後は全盲ランナーのガイドランナーとして日本代表選手をサポート。
現在はランニングトレーナーとして活動する傍ら、ACEのチャリティ・アンバサダーとして、トレーナー目線でのアドバイスを行っている。
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箱根駅伝という経験

学生時代は箱根駅伝に出場し、2日目の山下り区間である6区を走っていました。3大会連続で6区を任され、区間2位で走った年もあり、チームとしては復路優勝も経験しています。

今振り返っても、箱根駅伝は一番インパクトのある経験です。100kmにわたって沿道を埋め尽くす応援の中を走る体験は、他の大会ではなかなか味わえません。学生という、精神的にも未熟な時期に、予選会から続く大きなプレッシャーを背負って走れたことは、人としての成長につながったと感じています。

一方で、山下りの6区は、身体との向き合い方が常に問われる区間でもありました。箱根駅伝の山下りは足への負担が大きく、多くの選手が足裏に水ぶくれができたり、アキレス腱の上まで炎症が出たりします。靴の中での摩擦による、軽いやけどのような状態ですね。私は幸い、大きなトラブルなく走り切ることができました。体重移動や接地の仕方、重心を一瞬で次に移す回転の速さなど、「どうすれば壊れずに走り切れるか」を常に意識していたことが影響しているのだと思います。体力が落ちてくると、どうしても体重を乗せてしまい、故障につながりやすくなります。


実業団で走り続けた8年間

大学卒業後は、実業団のNTT西日本に所属し、大卒から30歳まで約8年間競技を続けました。個人では全日本実業団など全国大会に出場し、チームとしてはニューイヤー駅伝にも継続して出場しました。

実業団に入ってからは、駅伝に対する捉え方が学生時代とは変わっていきました。箱根駅伝が目標そのものだった学生時代に比べて、実業団ではオリンピックや世界を見据えた中での一つの大会、通過点として駅伝を捉える感覚になっていったと思います。




全盲ランナーのガイドとして走る

30歳で現役を引退した後、全盲ランナーの谷口選手のガイドランナーとして活動するようになりました。日本代表の強化合宿や国内外の大会に同行し、世界大会の5000mで5位入賞という結果を、ガイドランナーとして支えてきました。

ガイドランナーは、コーチとも単なる伴走者とも違う役割です。一緒に走りながら判断し、意思疎通をし続ける必要があります。特に難しかったのは、視覚的な説明ができない中での動きづくりでした。言葉やリズムだけで伝える必要があり、その経験が自分自身の言語化能力を大きく鍛えてくれたと感じています。




チャリティ・アンバサダーとして

東京マラソンへの出場や、これまでの活動を通じて、ボランティアや社会貢献は身近なものだと感じていました。

ACEの活動に関わる中で、ランニングとチャリティの相性の良さを改めて感じています。一人で走るよりも、仲間やチームの存在があることで満足感や喜びが大きくなる。応援されることで、また誰かを応援したくなる。そうした循環に価値を感じ、現在はACEのチャリティ・アンバサダーとして、トレーナー目線でのアドバイスも行っています。




市民ランナーを取り巻く環境

市民ランナーのレベルは年々上がっていると感じる一方で、マナーやスポーツマンシップの面では、まだ課題もあると感じています。ランニングは個人で始められる生涯スポーツですが、学びの場やコミュニティがないまま続けていると、知らず知らずのうちに周囲に迷惑をかけてしまうこともあります。
だからこそ、走る技術だけでなく、ランナーとして大切にしたい考え方や振る舞いについても、少しずつ共有していければと思っています。自身のアスリートとしての経験に加え、ブラインドランナーのコーチ、ボランティア、大学駅伝部監督としての経験を通して、これまで実際に肌で感じてきた大切なことを、ランナーの皆さまに還元していきたいと考えています。


初めて東京マラソンに挑戦する方へ

東京マラソンの制限時間は7時間あります。歩きを交えながらでも、事前に準備をしていれば完走は十分に可能です。
怪我なく、楽しくゴールすることが何より大切です。大会当日だけでなく、そこに至るまでの準備期間も含めて、東京マラソンという経験そのものを楽しんでもらえたら嬉しいですね。


取材を終えて(ACE)

競技の第一線を走ってきた松垣さんが、今大切にしている「誰かとつながる走り」。その姿勢は、ACEが大切にしてきたチャリティランの価値そのものです。
チャリティランナーの皆さん一人ひとりが、走ることを通じて人や社会とのつながりを感じ、その走りが、次の誰かの一歩へとつながっていく。ACEはこれからも、ランナーの皆さんとともに、そんな循環を育んでいきたいと考えています。

東京マラソンEXPO 2026の期間中には、松垣さんと一緒に行うコンディショニングランを開催します。
走る前後の身体の使い方を確認しながら、無理のないペースで進めます。
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